ピアノ修理・調律で美しい音・タッチを甦らせよう
整音
調律では音程を、整調ではメカニズムを整えた後、いよいよ音量や音色を均一にする作業である「整音」に入ります。整音は職人さんの繊細かつ高度な能力が必要となる為、本当に腕のある調律師さんにお願いすることが大切です。
ピアノの整音って?
整音とは英語ではvoicingと言います。人で言えば、発声を美しい声の出し方にする作業だということです。正しく、綺麗な発声になるように、音色に特に影響のあるハンマー(木の周りにフェルトを巻きつけた、「かまぼこ」のような部品です)を中心にメンテナンスを行う作業の事を「整音」といいます。
単に音のでるピアノから、「音楽的な音の出るピアノ」になると考えると良いです。
その作業の前後では、音の違いがハッキリとわかります。特に、欧米製のピアノではその差が顕著に出るもののようです。
整音をするにあたっては、きちんと修理・整調・調律が完了されていることが大前提です。これらどの工程にも、音色に影響を与える要素があるので、これらの作業のどれかが不完全だと良い結果が得られません。
ハンマーは長年の演奏により消耗しますし、仮に未使用であっても高温多湿といったピアノにとって過酷な環境下であれば劣化は免れません。こんな風になってしまったハンマーを、専用工具を使って理想的な状態に仕上げていきます。
整音の具体的な作業
整音は、職人さんの「感覚」によって随分と仕上がりが変わってくるものだそうです。ピアノの音を魅力的にするのも、つまらない音にするのも調律師さんの腕次第なのですって。(もちろん演奏者の腕前も大きいですが…)
- ファイリング
…年数の経ったハンマーは、フェルト部分に弦の筋が深くついていることがあります。こうした場合はハンマーフェルトにペーパーをかけ、平らにする作業を行います。(音のバラつきを均一に整えます)
- アイロニング
…フェルト部分の起毛を落ち着かせる為や表面を硬くする目的で、焼きゴテをあてていきます。
- ピッカリング
…フェルトを柔らかくする目的で、ピッカーという専用道具(針)を刺して繊維をほぐしていきます。一歩間違えばフェルトの寿命を短くしてしまう、難しい作業のようです。(音の粒を揃えたり、音に丸味をもたせます)
- 硬化剤
…フェルトを硬くする目的で、薬剤を表面に塗ったり内部に注射したりします。(音がクリアになります)
管理人のピアノも、職人さんの手が入った後は、どこかヨーロッパを思わせる繊細で豊かな音が出せるようになったと感じています。「私、ピアノの腕前が上がった?」と錯覚してしまう程です。